2025年6月25日、パリのパレ・ド・トーキョー(※)にて、TATRASの2026年春夏プレゼンテーションが開催されました。今回のコレクションは「アーバンサファリ」をテーマに掲げ、真夏の都市における機能性と美しさを探求する、都会と自然の境界を軽やかに越える提案となりました。
キュレーターのメディ・ダグリ氏が手がけた空間は、見る者を静寂へと誘い込みます。鏡面の水盤、障子スクリーン、焼杉のベンチ、そして水辺にたたずむ純白の樹木が、無骨なコンクリート空間に洗練された静けさをもたらしていました。エド・ダヴェンポート氏による楽曲は、緩やかな緊張感を伴いながら響き渡り、光と影がナイロンタフタやヘリンボーンコットンといった素材を優しく照らします。特に、モデルの着用するジョッパーパンツやショートジャケットの美しいラインが際立ち、日本文化が持つ「純粋さ」と「儚い美」が静かに共鳴する空間が創出されていました。


「アーバンサファリ」というテーマは、カーキとサンドを基調とし、そこに鮮やかなビビッドグリーンを差し色として取り入れることで表現されています。カモフラージュ柄と日本的なストライプが再構築され、都市の景観にも自然の風景にも溶け込む独創的なスタイルを提案。
ジョッパーパンツ、ショートジャケット、そしてフードやキャップといった多機能なアイテムは、都市と自然の双方に順応し、着用する人の動きに寄り添うTATRASの信念を具現化しました。

ショーの終盤には、照明が徐々に強まり、障子越しのシルエットの中にビビッドグリーンが鮮やかに浮かび上がりました。水盤はモデルたちのルックを鏡のように映し出し、一列に並んだモデルたちの姿は、布と光と水が重なり合う幻想的な光景を生み出しました。硬質なコンクリートと静かな舞台装置が溶け合う中で、会場は一瞬の静寂に包まれ、その余韻は観客の胸に高揚感と次の季節への期待を深く刻み込み、ショーは静かに幕を閉じました。
TATRASの今回のプレゼンテーションは、無骨な空間の中に洗練された美意識を重ね合わせることで、ブランドが追求する時代を超えたエレガンスを見事に表現していました。
※パレ・ド・トーキョーは、セーヌ川に面した現代アート専門の美術館で、1937年のパリ万博の際に美術展示館として建設され、2002年に再オープンしました。




