第4章 新領域への挑戦

世界を、業界を切り拓く、さらなる進化へ。

21世紀を迎え一層と社会が変化する中で、ヤギは新たな領域の開拓に挑戦する。その一つが消費者直結型の自社インナーブランド「エニワイズ」だ。消費者直販への挑戦を進めた何よりの理由は、消費者の声を直接入手できるメリットに着目したからだった。消費者ニーズに合った商品開発が可能になれば、OEM(相手先ブランドによる生産)ビジネスでの相乗効果も見込める。

 

さらに、消費者ニーズという「情報」を取引先に提供できるのも強みになると考えたのだ。その狙い通り、既存事業であるOEMも大きな進化を遂げる。従来は大手アパレルから単純下請のOEM生産が多かったが、素材から製品までをトータルで企画提案する提案型のODM生産という新たな事業モデルへと転換。2006年には東京・青山において初の総合展示会も開催し、新たなヤギのビジネススタイルが確立された。2010年には、テキスタイル担当やデザイナー、マーチャンダイザーらが部署の枠を超えて集結し新たにOEM企画チームが設置され、「ヤギでなければできない」独自の価値を提供する新体制が整った。

ヤギの躍進は国内だけに留まらない。グローバル進出の足がかりとしてまず手がけたのが、欧米向けの海外ブランドを柱としたM&A戦略である。2014年、ミラノを拠点としたトータルファッションブランド「TATRAS」「SOLIDO」を基幹ブランドとする「リープスアンドバウンズ」を子会社化し、海外ブランド事業を拡大。さらにテキスタイル事業の拡大のため繊維商社の「イチメン」を子会社化する。

 

これら国内外における戦略的なM&Aにより、海外販売体制の強化、テキスタイル事業の強化、テキスタイルのブランド化を推進した。2015年には、それまで「アセアン・ゲートウェイ・プロジェクト」を展開してきた海外事業部を改組し、海外営業推進部を開設。アセアン地域だけでなく欧米へと生地販売エリアを拡大した。

「タトラス&ストラダエスト」の南青山店
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「タトラス&ストラダエスト」の南青山店

これを好機と見るや、ヤギは矢継ぎ早に次の手を打つ。2016年には、素材から製品までを一貫して企画提案するプロジェクトチームを立ち上げ、欧州の素材・縫製を活用したダウンジャケット、ウールコートなどを提案。また、タトラスジャパンの優れた企画力を生かし、セレクトショップや百貨店向けの高付加価値商材の供給を図るなど、「これまでのヤギにはないもの」を積極的に取り入れることで、着実に事業を拡大していったである。

2018年に創業125年を迎えたヤギ。その歩みの背景には常に『挑戦』があった。そしてこれからも、創業以来、脈々と受け継がれる「終始一誠意」という想いを胸に、繊維の世界に新たな時代を切り拓くべく、ヤギは終わらない『進化』を続けていくのだ。

ODM事業を拡大するプロジェクトチームが手掛ける、世界初のシート状ダウン「THINDOWN」